tataraのブログ
徳永家具工房/東側壁面・スギ羽目板 経年変化の継続的観察
もともと家具の仕上げ塗料としてスタートしたtatara撥水シリーズは、少しづつ建築仕上げ塗材としても本格的に使われるようになってきました。
tataraは決して万能な塗料でない仕上げ材ではありますが、塗膜を形成しない素材感を重視した仕上げ感に加え、撥水性能による防汚・防カビ・防腐・防蟻性能さらにハンドリングの良さに期待を寄せる声が少なからず増してきました。
もっとも一般的でわかりやすい施工例を継続的に観察し、tatara採用の一助にしていただければと思います。これから2〜3年後までの経過観察を通し、やがてメンテナンス施工に至る一連の経緯を説明できるサンプルとしてまいりたい所存です。
ちなみに、この東壁面の吉野スギ材はt15厚・源平小節、tatara撥水セラミックマルチ表裏にあえて一回塗り(羽目板材は壁面施工前に水平状態でたっぷり1回塗工)で施工しております。数年経ってツヤのある美しいシルバーグレーに経年変化するイメージで施工しました。
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●2018.12月施工〜2019.2/18
施工より2ヶ月程度経過し少々落ち着いた表情になってきました。LDKに面した壁面になりますが、無垢の杉羽目板を施工するだけで室内は冬は暖まりやすく冷めにくく、夏は日中の遮熱・適度な吸湿性を発揮しエアコンの効きも良くなるようです。これらの機能にくわえ明るく素敵な美観になればと期待しています。
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●2019.4/18 約4ヶ月経過
春の陽光に照らされて木材の乾燥も十分にすすみ心なしか明るい表情になったような・・・!?
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●2019.6/24 約6ヶ月経過
梅雨時期の花曇り羽目板の赤みは大方抜けていく。本格的な夏の強烈な紫外線下で一気の灰化・色あせは進行する。表面のシミ・カビ・鉄反応・アクなどが発生せずに灰化がすすむみ、ツヤツヤとしたシルバーグレーの表情にお目にかかれるのだろうか?
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●2019.10/15 約10ヶ月経過
ひと夏を過ぎた頃、ストーブ煙突排気口の金属から滴りによるシミが目立ってきた。杉材の木地色はまだまだ褪せてはいない。
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●2020.2/4 一年2ヶ月経過
軒先のすぐ下は紫外線・雨風をある程度避けられているので木肌は十分に残っているものの、軒先にかかっていない中間部は遠目に見るとほぼグレーに近い。まだ下方部はすこしマシな状態といえる。サッシ枠・ガス管・排気口・最下部のについては、金属成分(Fe?)による影響が見られるが、四季をひとまわり通りすぎおおむね問題なく推移している考えている。鉄成分の影響は輪ジミ・アク止め下地剤で抑制できるかもしれないが撥水セラミックマルチの浸透が浅くなりがちなので悩ましいところ。最終イメージである”ツヤ感のあるシルバーグレー”は、3年経過くらいを予測している。
木肌の手触りはツルツルで荒れている気配はない。
軒下・中央部・窓枠まわり・下方部と条件により状態の変化が明確になってきた。汚れてきた感がある。
自然な経年変化といえるがやはり色ムラが気になるところ。
黒点→杉材から吹き出した樹脂成分にカビの胞子がくっ付いたもの。灰化→雨粒に含まれる鉄分の反応による変色。木材表面の荒れカサつきは感じられないので紫外線分解はさほど進んでいないかと考えられる。ひたまず、このまま放置することにする。
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●2020.12/7 まる二年経過(一部メンテナンス施工)
施工後まる2年経過。杉材羽目板は微かに木肌が残るものの軒下・中央部・窓まわり・下方部とそれぞれの条件に応じて色ムラが明確になった。軒下は雨風および紫外線の影響が軽く経年変化の途上といった状態。中央部はかなり灰化が進んでいる。窓枠まわりは雨筋に黒く鉄染みが濃くなってきた。雨粒が下方部にたまりより黒く染まっている。ディテールは杉材から噴き出た樹脂成分とカビの胞子がくっ付き黒点が大きくなってきた。
この時点で一部にカビスケ水溶液を塗布し木材の健全性を確認してみることにした。
決して美しいとは言えないが想定内の状態といえる。このまま放置確認する部分と部分的にカビスケ水溶液を施工して見ることにした。
窓脇の黒い雨筋・下方部の鉄反応の黒シミ・カビの黒点はカビスケ水溶液塗布によって綺麗な杉材の木肌色になった。カビスケ水溶液はあくまでも鉄反応の中和作用とカビの漂白を行うもので木材繊維・組織を傷めるることなく、塗布し乾燥後水洗浄するだけで作業性はすこぶる良好。
メンテナンス施工後に撥水セラミックマルチを一回塗布したディテール。新規の木地より多少のヤケがはいり落ち着いた仕上がり感。 当初に撥水セラミック塗布をしているのでシミ・カビなどの木地汚染はほぼ見受けられない。木地繊維・組織の劣化もほぼ確認できない。この状態でさらに一年・二年・三年と経過を見ていくことにする。
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●2021.6/11 一部メンテナンス施工より半年経過
2020.12/7 一部メンテナンス施工して約半が経ち初めより約2年半経過した。市場の主要な木材塗料はおおよそ2〜3年がメンテナンス時期として推奨されているようです。当初からの塗工部位は、カビスケ水溶液を塗布し、乾燥・水洗いメンテナンス施工したカビ・灰化・シミなど半年経過したものを撮影している。2年が経過しスギ材内部の樹脂成分が放出しきった状態に撥水セラミックオイルおよび撥水セラミックマルチを塗り分けたものは、木目の色目・見栄えに違いはあるもののどちらも木質自体の劣化は見られずキレイな経年変化に推移している。今回の成果としては、スギ材のヤセがない状態で冬目・夏目の凹凸(うづくり状態)がないく今後の経過・耐久性など、さらに期待がもてるようになったことである。
●塗りっぱなし部分、およびカビスケ水溶液塗布後、乾燥・水洗いメンテナンスし撥水セラミックマルチ・撥水セラミックオイル塗布の面
●メンテナンスは、カビスケ水溶液塗布・乾燥・水洗い後、撥水セラミックマルチ・撥水セラミックオイルを塗り分け経過観察している。
●左側の撥水セラミックオイルの方が木目がはっきりと色目も濃く見える。撥水セラミックマルチはシルバーグレーの佇まいでこれも美観的にはアリかといえる。丸3年を経過しスギ樹脂成分は放出され尽くしてカビがつきにくい状態になっていると思われる。今後の経過としてはキレイな経年変化を示していくのではないかと期待している。もっとも特徴的なことは、スギ材のヤセがなく冬目・夏目の凹凸ができていないことである。
●新たに北西面スギ羽目板、方位による経年変化の違いを観察していく。
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●2021.10/20 一部メンテナンス施工より約一年経過
2020.12/7 一部メンテナンス施工して約半、初めより丸3年経過。スギ羽目板の明るい経年変化を目指した目標はイメージに近く推移している。2~3年を目処の一度目のメンテナンス(カビスケ水溶液を塗布し乾燥後水洗い、エンドユーザー対応できる作業レベル)により画像レベルの状態は実現可能であることは大きな成果だと考えている。
●またひとつ夏をこえて一層灰化が進んでいる。カビ付き・色目の変化・木肌の凹凸など詳細の観察する。
●スギ羽目板のディテール。撥水セラミックマルチ・撥水セラミックオイル塗工面の違い。一部上からオイルを塗布すると木肌の色目が戻る。
●北西面スギ羽目板、ひと夏を過ぎると羽目板表面の色あせてくるのがよくわかる。スギ羽目板表面の灰化・色あせは、紫外線照射よりも雨水が吹きつけて流れ落ちる影響の方が大きいことがわかる。これまでの試験経過のなか3年程度では木材繊維・組織は健全な状態(冬目・夏目の凹凸ができないフラットは表面)をKEEPしできている。
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●2022.6/25 メンテナンスを一度挟んで3年半経過
2020.12/7 一部メンテナンス施工して約一年、初めより丸3年半経過。
スギ羽目板の明るい経年変化を目指した目標は大きくそのまま推移しカビが付着することなく美観を保っている。以前に比較して木肌色が落ち着いて自然に見える。
●特にメンテナンス(カビスケ水溶液を塗布し乾燥後水洗いし撥水セラミックマルチ塗布部と撥水セラミックオイル塗布部に塗り分け)経過に伴い木材表面の美観比較試験も行っている。木肌の色目はどんどん抜けてシルバーグレーに変化してツヤ感も感じられるように見える。